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行動依存症候群とは??

[2024.12.13]

行動依存症候群(Behavioral Addiction)とは、特定の行動や活動に対して過剰に依存し、それが生活や健康、社会的な機能に悪影響を及ぼす状態を指します。

従来の物質依存(アルコールや薬物など)とは異なり、行動そのものが報酬系を刺激し、依存症状を引き起こします。

行動依存症候群は心理的依存が主であり、物質的な摂取を伴わないことが特徴です。

以下、詳しく解説します。

 

 

行動依存症候群の概要

行動依存症候群(Behavioral Addiction)は、特定の行動が脳内の報酬系を過剰に刺激し、制御不能なほどの依存状態を引き起こす心理的な障害です。これには物質の摂取を伴う従来の「物質依存症」(アルコール依存症や薬物依存症など)とは異なり、行動そのものが快感や報酬をもたらし、その結果として依存症状が生じるという特徴があります。

行動依存は、ギャンブル依存症のような古くから知られているものから、近年のテクノロジーの普及によって顕在化したインターネットやスマートフォン依存症まで、多岐にわたります。このような行動は一見すると生活の中で普通に行われる活動に見えますが、過剰になると深刻な精神的・身体的影響を及ぼします。


行動依存症候群の特徴

行動依存症候群には、以下のような特有の症状や特徴があります。

1. コントロールの喪失

依存行動が始まると、その行動に対するコントロールを失い、やめようと思っても続けてしまいます。例えば、ゲーム依存症では「もう1時間だけプレイするつもりだったのに気づけば何時間も経っていた」といった例が挙げられます。

2. 耐性の形成

依存行動を繰り返すうちに、行動による快感や満足感が薄れ、さらに多くの時間やエネルギーを費やすようになります。ギャンブル依存では、最初は少額の賭け金で満足していたのが、次第に高額の賭けを求めるようになるケースが典型的です。

3. 禁断症状

依存行動を中断すると、不快な心理的または身体的症状が現れます。これには不安感、イライラ、抑うつ、集中力の低下などが含まれます。インターネット依存症では、インターネットにアクセスできない状況が強いストレスを引き起こすことがあります。

4. 生活への悪影響

依存行動が原因で、家庭生活、職業生活、学業、人間関係、健康などに悪影響が出ます。買い物依存症では、過剰な出費が経済的困窮を招く一方で、健康や家族関係に問題を生じさせることがあります。

5. 自己否認と隠蔽

依存症の当事者は、自分が依存状態にあることを否定したり、周囲に隠そうとすることがよくあります。この自己否認は、治療や支援の開始を遅らせる大きな障壁となります。


主な行動依存症の種類

行動依存症候群にはさまざまなタイプがあり、それぞれに特有の症状や影響があります。

1. ギャンブル依存症

ギャンブル依存症は最も代表的な行動依存症の一つです。賭け事に対するコントロールを失い、多額の金銭を失っても賭け続ける傾向があります。この依存症は金銭的な損失だけでなく、家庭崩壊や精神的な問題を引き起こすことがあります。

2. ゲーム依存症

オンラインゲームやビデオゲームに過剰に没頭し、現実世界の責任や活動を放棄する状態です。WHO(世界保健機関)はこれを「ゲーム障害」として正式に認定しています。特に子どもや若者に多く見られます。

3. インターネット依存症

インターネットの長時間利用により、日常生活や社会的活動が阻害される状態です。SNS依存症やネットサーフィン依存症など、細分化された形でも現れます。

4. スマートフォン依存症

スマートフォンを手放せず、食事中や会話中でも使用してしまうなど、過度な使用が生活の質を損なう状態です。

5. 買い物依存症

不必要な買い物を繰り返し、経済的な問題を引き起こします。この行動はストレスや不安感を一時的に解消する手段として機能していることが多いです。

6. 性的依存症

ポルノ視聴や性的行動への過度な依存によって、仕事や人間関係に深刻な影響を及ぼします。

7. 運動依存症

健康的な活動であるはずの運動が、過剰になると依存症となります。運動をしないと罪悪感を覚えたり、身体的な疲労を無視して運動を続けることがあります。


発症のメカニズム

行動依存症候群の発症には、生物学的要因心理的要因社会的要因の3つが関与しています。

1. 生物学的要因

行動依存症は、脳の報酬系(特にドーパミン系)の過剰な活性化によって引き起こされます。特定の行動を行うとドーパミンが放出され、快感や満足感が得られます。しかし、繰り返し行動を続けることで、脳はその刺激に慣れ、より強い刺激を求めるようになります。

2. 心理的要因

行動依存症の背景には、不安、ストレス、孤独感、抑うつなどの心理的問題が関係していることが多いです。依存行動は一時的にこれらの感情を和らげる「逃避」の手段となり得ます。

3. 社会的要因

現代社会では、技術の進化や情報過多が依存行動を助長しています。例えば、スマートフォンやSNSの普及は、常時接続の便利さとともに、新たな依存症の温床ともなっています。


治療と支援方法

行動依存症候群の治療には、複数のアプローチが必要です。

1. 心理療法

  • 認知行動療法(CBT)
    行動依存の背景にある否定的な思考パターンを認識し、それを健康的な行動に置き換える療法です。
  • 動機づけ面接法(MI)
    患者の動機を引き出し、行動変容を促すカウンセリング技法です。

2. 薬物療法

依存症そのものを治療する薬はまだ限定的ですが、抑うつや不安を緩和するために抗うつ薬や抗不安薬が使用されることがあります。

3. 生活習慣の改善

規則的な生活や、依存行動に代わる新しい趣味や活動を見つけることが推奨されます。これにより、健康的な報酬系の活性化を促します。

4. 家族療法

依存症は家族にも影響を及ぼすため、家族全体を支援するアプローチも重要です。


社会的影響と予防策

行動依存症候群は、個人だけでなく社会全体にも負の影響をもたらします。例えば、ギャンブル依存症では経済的損失や犯罪行為、インターネット依存症では生産性の低下が問題となります。

予防策

  1. 教育と啓発
    • 依存症のリスクについての教育を学校や職場で行う。
  2. ストレス管理
    • ストレスに対処する健全な方法を学ぶ機会を提供する。
  3. 技術的制限
    • スクリーンタイム制限やデジタルデトックスを導入する。

 

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