【医師が解説】適応障害と自律神経
自律神経とは
みなさんの命を維持するために必要な、体の機能(脳・目・唾液腺・心臓・胃など)の働きを丁度いい状態に、自動で調整・管理してくれている神経のことです。
自律神経は「自らを律する」と書きますが、これは自分の意思とは関係なく自動的に制御するという意味です。
みなさんが寝ているときも起きているときも、自律神経は24時間、無休で素早い状況判断と対応を行なっています。
様々な変化に対して自動で管理・調整をしてくれているからこそ、環境の変化などにすぐに反応し、私たちは生きて行けているのです。
たとえば・・・
人は寝ている時もずっと呼吸を続けていますよね?
また、心臓の鼓動も止まることはないですよね?
食事をすれば自動的に胃や腸が消化活動をしてくれるし、暑くなれば汗が出てきて勝手に体温を適温に保とうとしてくれます。
これは、自律神経が24時間ずっと働いてくれているからなのです。
自律神経のしくみ-自律神経の役割ってなに??
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つの神経に分かれます。
この2つの神経系が正反対の働きを担い、かつ役割分担を通してシーソーのようにバランスを取り合ってくれています。
そのため、変化する日常や環境に合わせて体内環境を一定に保たせ、みなさんの体をちょうどいい状態に保たせてくれているのです。
交感神経、副交感神経それぞれのはたらきは以下のようになります。
交感神経が高まると・・・・
交感神経が高まると心も体もアクティブ状態になり、精神面では、気分が高揚して緊張状態に向かいます。
身体面では、血管が収縮して血圧も上がりますし、心拍数も増えます。
また、瞳孔は開き、唾液が減ります。
(緊張状態のときに目が見えないと困りますよね。また、緊張しているときに唾液も出てたら困りものです。)
胃腸の働きは抑制され膀胱は拡張します。
(危険を感じているときに消化する暇があれば他にパワーを使いたいですし、トイレに行きたくなっても大変です。)
副交感神経が高まると・・・・
副交感神経が高まると、心も体もリラックス状態になります。
精神面では、落ち着いた状態になり、冷静で穏やかな気持ちになります。
体はゆるみ、血圧は低下します。
(みなさんが寝ているときに体はリラックス状態ですよね??)
また、みなさんが辛かったり悲しい気持ちになったとき涙が出ますよね?
泣いた後はすっきりした気分になったりしませんか??
それは、涙を流すことによって副交感神経のスイッチが入るからです。
逆に、泣きたいのに我慢すると心身の緊張状態が続いてしまいます。
自律神経のみだれ-自律神経の乱れってなに??
自律神経が乱れると、このような症状につながることもあります。
過換気症候群
交感神経の働きすぎが原因で、呼吸のペースが早く浅くなり、酸素が足りずに息苦しく呼吸ができない状態になる。
起立性調節障害
副交感神経が働きすぎが原因で、血圧の低下につながり、朝が起きられなかったり、立った状態が続くと突然意識を失って倒れてしまう。
うつ症状
副交感神経が働きすぎが原因で憂うつになる、元気が出ない、倦怠感などの身体的・精神的な症状が出る。
自律神経のみだれ-どんなときに起きるの?
自律神経が乱れる大きな理由(原因)が2つあります。
ストレス
【要因】
・社会環境によるもの:会社や家庭内での人間関係、プレッシャー
・自然環境によるもの:音、光、温度などの変化
・個人の生まれ持った性格、体質、ものの考え方、捉え方
【理由】
ストレス社会と言われている現代社会では大きなストレス、小さなストレスを抱えながら生活しているかと思います。
ストレスがかかることによって交感神経が高まり、心や体に不安・緊張・苛立ち・動悸などのさまざまな歪みを生じさせてしまいます。
これらのストレスの要因が複雑に入り組んで自律神経のバランスが崩れてしまったときにさまざまな症状としてあらわれます。
生活リズムの乱れ
【要因】
慢性的な寝不足、昼と夜の逆転、
習慣的な深酒・喫煙、朝食抜きなどの不規則な生活
【理由】
人間の体には夜は寝て、朝は起きるなどのある一定のリズム(概日リズム)があります。
ところが、この本来のリズムに抗い夜型の生活をしている人も少なくありません。
仕事や子育てで夜更かしが続いたり、きまった時間に食事が取れない人もいらっしゃいます。
多少の無理は自律神経が整えてはくれますが、慢性的な寝不足や昼夜逆転、朝食抜きなどの不規則な生活が続くと、徐々に自律神経のスイッチがうまく切り替わらなくなり、さまざまな症状としてあらわれます。
自律神経のみだれ-自律神経失調症とは
自律神経失調症
自律神経失調症は特定の病名ではなく、自律神経のバランスの乱れによって出てくる不調全般に付けられた総称です。
なんらかの症状がある場合は、その症状の原因が別の病気によるものではないことを明らかにした上で自律神経失調症と判断されます。
症状のあらわれ方は千差万別
自律神経は体のすべての器官に影響を与えています。
そのため、頭から肩、心臓、呼吸器系、血管系、皮膚、胃腸、足の先まで全身のいたるところにあらわれますし、そのあらわれ方はひとによって異なります。
【身体症状】
・口:味覚異常、唾液がたまる、口が渇く
・心臓、胸部:動悸がする、胸が痛い・苦しい
・消化器:吐き気、消化不良、下痢・便秘
・耳:耳鳴り、異物感
・頭:頭痛、偏頭痛
・目:涙目、目が疲れる
・肩:肩こり
・首:首が痛い、首が回らない
・膀胱:残尿感、頻尿
・呼吸器:息切れ
・その他:血圧上昇、多汗、手足のしびれ 等
【精神症状】
・イライラ、不安感
・落ち込んだ状態が続く
・集中力、記憶力が低下する
・気分がよく変わる
・寂しい、悲しい、孤独を感じる
。情緒不安定、人と会いたくない
。細かいことが気になる
【全身症状】
・倦怠感、めまい、ほてり
・食欲不振
・不眠、眠りが浅い日中眠くなる
・すぐに起きられない
・疲れやすい、立ちくらみがする
・体温が頻繁に変わる、微熱
自律神経を整えよう-自律神経の整え方とは??
起床
朝は睡眠時(副交感神経が高まっている状態)から起床時にかけて交感神経からの切り替わるタイミングになります。
そのため、ゆっくりと体と心を起こしてあげることが大切です。(※睡眠の基礎で詳しくお伝えします)
・目覚めたら、陽の光をあびる(体内時計のリセット)
・目覚めは1杯の水を常温で一気に飲む(排便の促進)
・体をねじるストレッチを通して、腸を優しく目覚めさせる(腸の動き促進)
・朝食をゆっくり食べる(スムーズに交感神経へと移行する)
日常生活
【疲れや、眠気がでてきたら副交感神経が高まっているサインかも??】
・1時間座ったら、体を数分動かす(血流が悪くなることによる自律神経の乱れを予防する)
※立ったり、少しだけ体を動かして体をほぐしましょう!
①手首を回す ②足首を回す ③腰を回す ④足首を揺らす ⑤お腹をひねる
【緊張したり、不安が高まったりしたら交感神経が高まっているサインかも??】
・鏡を使って笑顔チェック(幸せホルモンが分泌され、副交感神経が活発になる!)
・息を7秒かけて吐き続ける(副交感神経が高まる) ※溜息も有効!
就寝
夜は副交感神経にスイッチが切り替わるタイミングです。(※睡眠の基礎で詳しくお伝えします)
そのため、1日頑張った自分をゆっくりとリラックスモードに変えていきましょう。
・ぬるめのお湯でリラックス(副交感神経へシフト)
・お好みの香りでリラックス(副交感神経へシフト)
・軽めのストレッチをして、体をゆるゆるに(副交感神経へシフト)
・スマートフォンは就寝1時間前には見ない(光の刺激によって交感神経が高まってしまう)
・ベットに入ったら、腹式呼吸(副交感神経へシフト)
自律神経を整えよう-自律神経の整え方とは??-呼吸について-
呼吸の速さと深さは意識的に変えることができます。
そのため、緊張や不安などストレスが高まった場合や、「浅くなってる」「早くなってる」と感じたときには、ゆっくりとした深い呼吸を意識する習慣を身につけましょう。
ゆっくり呼吸することで、筋肉と一緒に心も緩み。自律神経のバランスも調整されます。
さいごに-自律神経と仲良くするコツ
いろいろ自律神経について学んできました。いかがでしたでしょうか??
これまでの習慣をガラッと変えるのは難しいですし、健康に気を使いすぎてストレスを感じては意味がありません。
日頃の習慣をみなおして「自律神経と仲良くする」それぐらいで大丈夫です。
それに、ストレスの原因となってしまう要因は日常生活にはたくさん潜んでいます。
ストレスを受けることは当たり前のこととして、ストレスを受けたときのネガティブな気持ちや体調の変化を整えてあげるという風に、気持ちを変えてみましょう。
また、ストレスの多くは頭の中から発生します。
人間関係の悩み、将来への悩み、すべて頭の中で生み出したものです。
なので、たまにはあれこれ考えるのをやめて、五感を刺戟するのもいいかもしれません。
たとえば、土や花、草、木の匂いを感じたり、耳で風の音を聞いたり、目で木々のこもれ日を感じたり、肌で空気を触れる感覚もいいかもしれません。
たまには立ち止まって、新鮮な空気をいっぱい体に入れる、それだけでもすこし変わってくるかもしれません。
昨日の自分と比べてすこしでも身体が喜ぶことができていれば良し!くらいで自律神経のみだれとつきあってみてください。
記載:おりたメンタルクリニック医師
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