ADHD(注意欠陥多動性障害)とは??
1. ADHDとは何か?
ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder、注意欠陥・多動性障害)とは、発達障害の一つで、主に「注意力の維持が難しい」「衝動的に行動してしまう」「多動性が見られる」などの症状を特徴とする状態です。
ADHDは幼少期に発症することが多いですが、大人になっても症状が続くことが多く、日常生活や社会生活において困難を抱えることがあります。
発症率としては、子供の約5〜7%、成人の約2〜3%に見られ、男女比では男児の方が多い傾向があります。
ADHDの3つのタイプ
ADHDは、以下の3つのタイプに分類されます。
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不注意優勢型
- 主に注意力の欠如が目立つタイプ。
- 学校や職場でミスが多い、忘れ物が多い、物事を最後までやり遂げられない、指示を聞き逃すなどの症状が見られます。
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多動性・衝動性優勢型
- 主に多動性や衝動性が目立つタイプ。
- じっと座っていられない、手足を動かし続ける、順番を待つのが苦手、すぐに発言してしまうといった行動が目立ちます。
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混合型
- 不注意と多動性・衝動性の両方が見られるタイプ。
- 最も一般的なタイプであり、日常生活や社会生活での困難が大きくなりやすいです。
2. ADHDの原因
ADHDの原因は完全には解明されていませんが、脳の機能異常や遺伝的要因、環境要因が関わっていると考えられています。
① 脳機能の違い
ADHDの人は、脳の特定の領域の活動や発達に違いがあることが報告されています。
特に、前頭前野(前頭葉)という脳の部位が関わっており、ここは注意力や自己制御、計画性を司る部分です。
また、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの働きに異常が見られることがあり、これが注意力の低下や衝動的な行動の原因になると考えられています。
② 遺伝的要因
ADHDは遺伝的な要因が強く、親がADHDの場合、その子供もADHDである可能性が高くなります。
ADHDの子供を対象とした研究では、家族内での発症率が高いことが示されています。
③ 環境的要因
- 妊娠中の母親の喫煙やアルコール摂取
- 低出生体重や早産
- 幼少期の脳の損傷や栄養不足
- ストレスが多い家庭環境
これらの環境要因はADHDの発症リスクを高める可能性がありますが、あくまで要因の一つであり、直接的な原因ではありません。
3. ADHDの症状と影響
ADHDの症状は、個人によって現れ方や程度が異なりますが、以下のような特徴がよく見られます。
① 不注意の症状
- 集中力が続かず、すぐに気が散る
- 忘れ物が多い(例:学校の宿題や職場の重要書類)
- 物事を計画的に進めることが苦手
- 約束や締め切りを守れない
- 仕事や勉強を途中で投げ出すことが多い
② 多動性の症状
- じっと座っているのが苦手で、無意識に動いてしまう
- 会議中や授業中に立ち歩いてしまう
- おしゃべりが止まらない
- 過度にエネルギッシュで落ち着きがない
③ 衝動性の症状
- 考える前に行動してしまう
- 他人の話を遮ることが多い
- 順番を待つのが苦手
- 感情のコントロールが難しい(怒りやすい、すぐにイライラする)
4. ADHDが日常生活に与える影響
ADHDの症状は、家庭、学校、職場、人間関係など、日常生活のあらゆる場面に影響を与えることがあります。
① 子供のADHD
- 学習面: 集中力が続かず、授業内容が頭に入らない。宿題や課題を忘れる。
- 対人関係: 衝動的な言動や行動で友達とトラブルになることがある。
② 大人のADHD
- 仕事面: 期限やタスク管理が苦手でミスが多い。集中が続かない。
- 家庭生活: 金銭管理がうまくいかない、物が散らかる、約束を忘れる。
- 人間関係: 感情のコントロールが難しく、対人トラブルを起こしやすい。
5. ADHDの治療法
ADHDの治療は、主に薬物療法と心理社会的アプローチの2つを組み合わせて行います。
① 薬物療法
- 中枢神経刺激薬(メチルフェニデート): 集中力や注意力を高める。
- 非刺激薬(アトモキセチン): 衝動性や多動性を抑える。
② 行動療法・支援
- 認知行動療法: ADHDの特性を理解し、行動パターンを改善。
- 親子トレーニング: 子供への適切な対応方法を学ぶ。
- 学習支援: 学校で個別支援計画を立てる。
6. ADHDと共存するために
ADHDは本人の努力不足ではなく、脳機能の違いによるものです。早期に診断を受け、適切な治療や支援を受けることで、生活の質を大幅に改善できます。
大切なのは、本人の特性を理解し、適切な環境調整を行うことです。周囲の理解とサポートが何よりも重要となります。