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チック症候群とは??

[2024.12.16]

チック症候群は、突然、反復的、かつ意図せずに起こる運動や発声を伴う症状が特徴の神経発達障害です。

これらのチックは、本人の意思に反して発現し、しばしば一時的に抑えられるものの、抑えること自体がストレスとなり、後でさらに強い形で現れることがあります。

この症候群は幼少期に発症することが多く、特に5~7歳頃に初めて症状が現れることが一般的です。


チック症候群の症状とその種類

チック症候群の症状は、主に運動チック音声チックに分類されます。以下にそれぞれの詳細を示します。

1. 運動チック

運動チックは、特定の筋肉が短時間で収縮することによって起こる、反復的な身体の動きです。この動きは突然で、予測がつかず、本人の意思とは無関係に現れます。

例:

  • 瞬きや目をギュッと閉じる。
  • 顔をしかめる、口を開閉する。
  • 首を振る、肩をすくめる。
  • 手足を不自然に動かす。

運動チックは単純な動き(例: 瞬き、肩のすくめ)から始まることが多いですが、進行するにつれて複雑な動作(例: 飛び跳ねる、一定の動作を繰り返す)になることもあります。

2. 音声チック

音声チックは、喉や声帯の動きによって音声が意図せず発せられる症状です。これも突然で反復的です。

例:

  • 咳払い、嗚咽音(うめき声)。
  • 短い叫び声や単語(「うん」「あっ」など)。
  • 特定の言葉やフレーズを繰り返す(エコラリア)。
  • 他人を侮辱するような言葉が出てしまう(コプロラリア)。

音声チックの中には、周囲に誤解を与える可能性があるものもあり、本人や家族が苦労する原因となる場合があります。


チック症候群の主な分類

チック症候群は症状の持続期間や種類によって、以下の3つに大別されます。

1. 一過性チック障害

  • 特徴: チック症状が1年以内で自然に収まるもの。
  • 発症: 幼少期(主に6~8歳)。
  • 予後: 多くの場合、治療を必要とせず、自然に改善します。

2. 持続性(慢性)チック障害

  • 特徴: 運動チックまたは音声チックのいずれかが1年以上続くもの。
  • 発症: 小児期から思春期にかけて多く見られます。
  • 予後: 成長とともに軽減する場合もありますが、一部の人では成人期まで持続します。

3. トゥレット症候群

  • 特徴: 運動チックと音声チックの両方が1年以上持続する。
  • 発症: チック症候群の中で最も重い症状群で、小児期に発症し、成人期まで続くことがあります。
  • 社会的影響: 他人の目を引く症状が多く、社会生活や人間関係に影響を与える場合があります。

チック症候群の原因

チック症候群の原因は完全には解明されていませんが、現在までの研究で以下の要因が関与していると考えられています。

1. 神経生物学的要因

  • 脳内の異常: チック症候群では、脳内の神経伝達物質(特にドーパミン)の不均衡が影響しているとされています。
  • 関連部位: 大脳基底核や前頭葉など、運動制御や衝動抑制に関与する部位の異常が指摘されています。

2. 遺伝的要因

  • 家族内でチックやトゥレット症候群の患者がいる場合、子どもが発症するリスクが高まります。
  • 複数の遺伝子が関与している可能性があり、遺伝的要因と環境要因が相互に作用して発症すると考えられています。

3. 環境要因

  • 妊娠中や出産時のトラブル(低出生体重、早産など)。
  • ストレス、疲労、興奮などの心理的要因が症状の悪化を引き起こすことがあります。

チック症候群の診断

チック症候群の診断は、主に症状の観察と経過の把握によって行われます。以下の基準が一般的に用いられます。

  1. チック症状が反復的であり、1日を通して何度も現れる。
  2. 症状が1年以上持続している(慢性の場合)。
  3. 症状が他の疾患や薬剤の影響ではない。

チック症候群の治療法

治療の目標は、症状そのものを完全になくすことではなく、患者の生活の質を向上させることです。

1. 教育と環境調整

  • チック症状について家族や学校が理解を深めることで、患者が受けるストレスを軽減します。
  • 学校では、症状を過度に指摘したり罰したりしないよう配慮します。

2. 認知行動療法

  • 習慣逆転療法 (Habit Reversal Training, HRT): チックを抑える代わりの行動を学習する療法です。
  • 心理療法は特に軽症から中等度の患者に有効です。

3. 薬物療法

症状が生活に著しい支障を来している場合、以下の薬物療法が用いられることがあります。

  • ドーパミン拮抗薬: チック症状を抑える効果があります(例: リスペリドン、アリピプラゾール)。
  • α2受容体作動薬: 衝動性や興奮を抑える(例: クロニジン、グアンファシン)。
  • 抗不安薬や抗うつ薬: 合併する不安障害やうつ病に対応。

4. 外科的療法

  • 脳深部刺激療法 (DBS): 非常に重度なトゥレット症候群で、他の治療法が効果を示さない場合に限られます。

日常生活における支援と工夫

1. ストレス管理

  • ストレスや疲労が症状を悪化させるため、リラクゼーション法(深呼吸、瞑想)や十分な休息が重要です。

2. 理解とサポート

  • 周囲の人々がチック症状を理解し、本人を責めたりしないことが重要です。
  • 子どもに対しては、過度なプレッシャーを与えないようにすることが大切です。

3. 専門家との連携

  • 小児神経科や精神科を受診し、長期的な支援計画を立てることが推奨されます。

まとめ

チック症候群は、主に小児期に発症し、成長とともに改善する場合が多いものの、一部では成人期まで症状が続くこともあります。早期の理解と適切な支援、治療を行うことで、症状のコントロールや生活の質の向上が期待されます。特に家族や周囲の理解が、症状の悪化を防ぎ、本人の心理的な負担を軽減する上で重要です。

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