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【産業医】とは?その役割と、関わり方について

[2022.11.17]

産業医について

 

産業医は、企業等において労働者の健康管理等を行う医師のことです。

(※日本では、1972年の労働安全衛生法施行時に、従来の「医師である衛生管理者」について、専門医学的立場で労働衛生を遂行する者であることを明確にするためにその呼称を改め、専門家として労働者の健康管理にあたることとしたものである。)

 

産業医の仕事としては以下のようなものがあります。

 

 

 

産業医の仕事①:衛生委員会への出席と意見出し

従業員の人数が50人以上いる企業は「衛生委員会」を設置・開催する必要があります。

また、特定の業種については、安全委員会も設置する必要があります。

 

一般的に、産業医はこの衛生委員会・安全衛生委員会への構成員として出席し、事業場に対して意見を述べます。

安全衛生委員会の開催は産業医訪問時に実施する企業が多く、1回あたりおよそ30〜40分程度で実施しています。

なお、安全・衛生委員会への産業医の出席は義務ではありませんが、構成員として出席することが望ましいとされています。

2020年からは、衛生委員会をリモート開催する企業も増えていると思われますが、必ず担当者が議事録を作成し、適切に保存する必要があります。

そして、産業医が出席できなかった場合には議事録を産業医に共有し、産業医が内容を確認できるようにしましょう。

 

 

産業医の仕事②:衛生講話

産業医が、安全衛生委員会や職場において、健康管理や衛生管理を目的に、社員に向けて研修を実施します。

これを「衛生講話」といいます。衛生講話は、企業の希望に応じて行うものです。

 

頻度・開催方法などが法律に定められているものではなく、健康教育の一環として企業・組織の自発的な要望により開催されます。

まずは「衛生講話とは何か」「うちの会社に必要な講話はどのようなものか」ということを企業と産業医とで確認することが大切です。

その上で必要であれば、職場の課題に応じた衛生講話の目的や内容を考えましょう。

 

 

産業医の仕事③:職場巡視

産業医は少なくとも毎月1回(※)職場を巡視し、職場環境の確認を行います。

これを「職場巡視」をいいます。

企業によって職場巡視の内容は異なりますが、主な内容は次のものです。

・4S(整理、整頓、清掃、清潔の略)

・温熱環境(温度計、湿度計の設置、冷暖房環境、事務所衛生基準規則で定められた基準を守っているか)

・照度(一般事務でも最低500ルクス、通常750ルクス以上、設計業務では1500ルクス以上が推奨)

・VDT作業(コンピュータを用いた作業)環境

・トイレの衛生環境

・休養・休憩室

・AED、消火器の場所

・休憩室の衛生管理ができているか(生ごみの臭いがないか、冷蔵庫の中の保存期限など)

・室温など

また、産業医による職場巡視で問題が発見された場合には、衛生委員会等で報告し、改善を図ります。

※条件付きで2ヶ月に1回以上の職場巡視も可能です。

 

 

産業医の仕事④:健康診断結果チェックと就業判定

産業医は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された社員について就業判定を行います。

その上で、休職等が必要と判断した従業員に対して「意見書」を作成します。

企業は「健康診断結果報告書」に産業医の押印をもらい、労働基準監督署に遅延なく提出する義務があります。

※産業医による「押印」が不要に法令の改正によって、2020年8月中旬からは「定期健康診断結果報告書等」やストレスチェックに関する産業医の押印が不要となりました。

 

 

産業医の仕事⑤:健康相談

康診断後などに、従業員から健康に関する相談を希望された場合、産業医は従業員の「健康相談」を受けます。

また、ストレスチェックの高ストレス者や長時間労働面談の対象者に、健康相談という名目で面談を行うこともあります。

企業や産業医によって面談を行うまでのプロセスは様々ですが、従業員が面談を受けやすい環境を整備することで、健康に関するリスクマネジメントが行えます。

 

 

産業医の仕事⑥:休職面談

従業員から休職を希望された場合や、体調不良での欠勤、遅刻、早退が続いているなどの状況が確認された場合に、産業医は「休職面談」を行います。

休職は本人からの申し出があることが一般的であり、従業員の休職希望の申し出から休職面談を行うという流れが多いといわれています。

休職者の対応について、慣れていない担当者も多いと思います。

いざとなって慌てないよう、事前に情報収集を心掛けておきましょう。

 

 

産業医の仕事⑦:復職面談

休職していた従業員から、職場復帰の希望があった場合に、産業医はその従業員に対し「復職面談」を行います。

そして、復職面談で病状の回復程度を把握することにより、職場復帰の可否を判断します。

また、復職後の労働条件について、勤務の軽減等が必要な場合にはその旨期間を定めて就業制限を指示します。

 

 

産業医の仕事⑧:ストレスチェック実施者としての産業医

産業医は、ストレスチェックの実施者としてストレスチェックの計画・実施・終了まで全般に携わることが多いです。

その際、産業医にはストレスチェック実施者として、専門的な立場からアドバイスを行ってもらう役割もあるのです。

また、少しややこしいのですが、ストレスチェックには「実施事務従事者」という役割を持った人も携わります。

それぞれの違いや役割について、事前に確認しておきましょう。

 

 

産業医の仕事⑨:高ストレス者への面談

トレスチェックの結果、高ストレスにより面接指導が必要であると判断された従業員がいる場合には、産業医が「高ストレス者面談」を行います。

産業医による高ストレス者面接指導により、その後の就業に関する意見をもらうことや、場合によっては休業に関するアドバイスもなされます。

 

 

産業医の仕事⑩:長時間労働者への面接指導

時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合、産業医は「長時間労働者面接指導」を行います。

また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対しては、申し出なしでも面接指導を行います。

面談を通じ、産業医がストレス状態やその他の心身の状況及び勤務の状況等を確認します。

それにより、社員のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行うとともに、必要に応じて企業による適切な措置につなげることができます。

また、セルフケアのアドバイスを実施し、必要に応じて専門医を紹介することもあります。

 

 

 

 

産業医の法定業務

 

<産業医の職務>(労働安全衛生規則14条)


次の事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。


・ 健康診断の実施、およびその結果に基づく労働者の健康を保持す

るための措置に関すること。


・ 過重労働者への面接指導および必要な措置の実施、ならびにこ

れらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

・  心理的な負担の程度を把握するための検査、面接指導、およびそ

の結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

 

・作業環境の維持管理に関すること。

・作業の管理に関すること。  上記のほか、労働者の健康管理に関すること。

・ 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。

・ 衛生教育に関すること。

・ 労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置に関すること。

 作業環境の維持管理に関すること。

・ 作業の管理に関すること。

・ 上記のほか、労働者の健康管理に関すること。

・ 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。

・ 衛生教育に関すること。


・ 労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置に関すること。

 

<産業医の勧告権>(労働安全衛生法13条3項、4項)

産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。

事業者は、上記勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。

<産業医の指導・助言権>(労働安全衛生規則14条3項、4項)

産業医は、上記職務に関し、総括安全衛生管理者に対して勧告、または衛生管理者に対して指導・助言することができる。

事業者は、産業医が勧告、指導もしくは助言をしたことを理由として、産業医が解任その他不利益な取扱いを受けないようにしなければならない。

 

 <産業医の定期巡視および権限の付与>(労働安全衛生規則15条)

産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

事業者は、産業医に対し、上記をなし得る権限を与えなければならない。

 

 

 

 12時間の訪問で「産業医としてやらなければならない業務」

  • 月1回訪問の嘱託産業医が、限られた時間の中で、社員の健康の維持増進のために優先す

 べきことは、 できるかぎり多くの社員と面談をすることである。

 その際には、必ず面接指導結果報告書(別名:産業医カルテ)の記録を会社に残すこと

 

 

 

 

 

法律上の必須業務

 1. 毎月1回の職場巡視

 工場などと異なり、一般事務所の場合は、点検しなければならない項目は少ないものである。

事務所衛生基準規則などの法律を参考に、「職場巡視チェックリスト」をあらかじめ作

成し、衛生管理者と一緒に職場巡視を実施し、チェック項目の良否判定と改善状況などを

確認する。
ポイントは、「巡視した記録」(職場巡視チェックリスト)を残すこと

 

 

 

 

2. 過重労働者面談

 過重労働者の面接指導は必ず実施しなければいけません。


会社のリスクマネジメントとしては、なるべく前広に対象者が抽出されるように、社内ルールを決める。詳しくはこちら)。


健康上問題がない元気な社員からは、「忙しいのに時間の無駄だ」といった反応がある。

しかし面談対象者のうち約20%程度の方に、うつ病などの初期症状が見受けられることが

多く、医師(産業医)の判断で、就業制限が必要な方が、必ず見つかる。


健康上の不安がないと言っている方についても3~5分程度の時間でも構いませんので、当

人からの申出待ちをせずに、積極的に産業医面接を受けさせる。

疲労蓄積度チェックリストなどを活用することで、良い効果(残業時間短縮、健康改善)

が期待できる。

 

 

 

 

 

<参考資料>

産業医の関連法令

労働安全衛生法 第13条(産業医等)

1 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

2 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。

3 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。

 4 事業者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。

 第13条の2

事業者は、前条第1項の事業場以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うの に

必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管 理

等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない

 

 

 

<参考資料>

労働安全衛生規則

 

 第13条(産業医の選任)

 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行なわなけれ ばならない。

 一 産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任すること。

 二 常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時500人以上の労 働者を従事させる事業場にあっては、その事業場に専属の者を選任すること。

 イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務

 ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 ホ 異常気圧下における業務

ヘ さく岩機、鋲(びょう)打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務

ト 重量物の取扱い等重激な業務

チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

リ 坑内における業務 ヌ 深夜業を含む業務

ル 水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸、その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

ヲ 鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫 酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ず る有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

ワ 原体によって汚染のおそれが著しい業務

カ その他厚生労働大臣が定める業務 三 常時3000人をこえる労働者を使用する事業場にあっては

、2人以上の産業医を選 任すること。 (第 2 項以下略)

第14条(産業医及び産業歯科医の職務等)

1 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次の事項で医学に関する専門的知識 を必要とするものとする。

一 健康診断及び面接指導等(法第66条の8第1項に規定する面接指導(以下「面接指導」 という。)及び法第66条の9に規定する必要な措置をいう。)の実施並びにこれらの結 果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

二 作業環境の維持管理に関すること。

三 作業の管理に関すること。

四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。

五 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。

六 衛生教育に関すること。

七 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

 

2 法第13条第2項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。

 一 法第13条第1項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」とい う。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定す る者(法人に限る。)が行うものを修了した者

二 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大 学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業し た者であって、その大学が行う実習を履修したもの

三 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの

四 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講 師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあった者

五 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

 

3 産業医は、第1項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又 は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。

 

4 事業者は、産業医が法第13条第3項の規定による勧告をしたこと又は前項の規定によ る勧告、指導若しくは助言をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な 取扱いをしないようにしなければならない。

(第 5 項以下略)

 

第15条(産業医の定期巡視及び権限の付与)

1 産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければな らない。

2 事業者は、産業医に対し、前条第1項に規定する事項をなし得る権限を与えなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記載:おりたメンタルクリニック医師

 


 

 

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