精神科の診断基準であるDSMとは??
[2023.12.12]
DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)は、アメリカ精神医学会(APA)が出版している、精神障害の診断と統計に関するマニュアルです。
精神障害の診断、治療、研究において、世界中の医療専門家に広く利用されています。
DSMの歴史と進化
- DSM-I(1952年): 最初の版は、主に精神分析理論に基づいていました。
- DSM-II(1968年): この版では、精神障害の分類が拡張されましたが、診断基準はまだ不明確でした。
- DSM-III(1980年): 精神障害の診断に革命をもたらした版で、明確な診断基準と多軸診断システムが導入されました。
- DSM-III-R(1987年): 小規模な改訂版で、いくつかの診断基準が更新されました。
- DSM-IV(1994年): より科学的なアプローチと文化的感度を持ち、診断基準がさらに洗練されました。
- DSM-IV-TR(2000年): 「テキスト改訂版」で、文書の内容が更新されました。
- DSM-5(2013年): 最新版で、多軸診断システムが廃止され、障害の分類が見直されました。
DSMの特徴
- 体系的な分類: 精神障害をカテゴリーに分類し、それぞれについて詳細な記述を提供します。
- 診断基準の明確化: 各障害に対する具体的な診断基準を定め、診断の一貫性と正確性を向上させます。
- 多軸診断システム: DSM-IVまで使用されていたこのシステムは、個々の患者の状態を多面的に評価するためのものでした。
- 統計情報: 各障害の発生率や治療法に関する統計データを提供します。
DSMの影響と批判
DSMは、精神医学分野において非常に影響力がありますが、いくつかの点で批判も受けています。
たとえば、文化的背景や社会的要因が十分に考慮されていないという批判や、特定の障害の診断基準に関する議論があります。
また、製薬会社の影響が診断基準に及ぶことへの懸念も指摘されています。
DSMとICDの違い
DSMは主にアメリカで使用されるのに対し、ICD(国際疾病分類)は世界保健機関(WHO)が出版するもので、より国際的な視点を持っています。
ICDは医療のあらゆる分野をカバーする一方で、DSMは精神障害に特化しています。
DSMの各版は、当時の科学的知見と臨床経験に基づいて進化しており、精神障害の理解が進むにつれて診断基準や分類体系も変化しています。
そのため、精神医学の分野での研究や臨床実践において、DSMは欠かせないツールであると同時に、常に更新と改善が求められる文書です。