SNSとうつの関係性について
[2023.07.25]
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)とうつ病の関係性については、多くの研究が行われており、様々な結果が得られています。
SNSとうつ病の関連性についての詳細解説
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、現代社会で日常的に利用されるコミュニケーションツールです。しかし、SNSの利用がうつ病などのメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があることが、近年の研究や報告から明らかになっています。この問題は複雑で多面的ですが、その詳細なメカニズムと背景を以下で解説します。
1. SNSとうつ病の関連性の背景
SNSは、情報共有や人々のつながりを促進する一方で、以下のような心理的影響をもたらします。
(1) 社会的比較の増加
- SNS上では、他人の投稿(旅行、食事、成功談、趣味など)が目に入りやすく、それらがしばしば理想化された形で表現されています。
- これにより、利用者が無意識のうちに他人の生活と自分自身を比較し、自分が「不十分」であると感じる可能性があります。
- 特に「上方比較」(自分よりも優れた人と比較する行為)は、自己評価の低下や不満感を引き起こし、うつ症状を悪化させる要因になります。
- 例えば、「同年代の友人がキャリアで成功している」「趣味の活動が充実している」などの投稿を見た際に、自分の生活を過小評価することがあります。
(2) ネガティブな相互作用(サイバーブレイムや批判)
- SNSは匿名性が高い場合が多く、そのため、いじめや中傷が発生しやすい環境です。
- 誹謗中傷やネガティブなコメントは、被害者の自己肯定感を大きく損ない、強いストレスやトラウマを引き起こします。
- さらに、いじめがエスカレートすると自殺念慮や行動に至るケースも報告されています。
(3) FOMO(Fear of Missing Out)による心理的負担
- FOMOとは、「他人が楽しい活動に参加している一方で、自分が取り残されている」という不安や孤独感を指します。
- SNSでは、他人が楽しいイベントや活動を共有することが多く、自分がその場にいないことへの焦りや不満が生じることがあります。
- 特に若年層では、こうした感情が顕著に表れ、自己否定や孤立感を引き起こすことが確認されています。
(4) 過剰な利用による影響
- SNSの長時間利用が、睡眠不足や生活リズムの乱れを引き起こします。
- スマートフォンを長時間操作することによるブルーライトの影響や、就寝前にSNSを見る習慣が、睡眠の質を低下させる原因となっています。
- 睡眠不足は、うつ症状や不安感の増加に直結しており、これが長期的なメンタルヘルスの悪化を招くことがあります。
2. SNSとうつ病の関連性に関する研究
多くの研究が、SNSとうつ病の関連性を裏付けています。以下はその具体例です。
(1) SNS利用時間とうつ病の関連
- 2017年の研究(PLOS ONE)
1日に数時間以上SNSを利用する若者は、孤独感やうつ症状を抱えやすいことが示されています。この研究では、SNS利用時間が長いほど、精神的な健康に悪影響を与える可能性が高いことが指摘されています。
(2) 青少年の精神健康に与える影響
- 2019年の研究(JAMA Pediatrics)
10代の青少年を対象とした調査では、SNSの利用頻度が高い人々ほど、うつ病や不安障害の発症リスクが高まるという結果が得られました。この研究では、特に女性において、外見に関する比較が自己評価を下げる要因となっていることが明らかになっています。
(3) 自己価値感の低下
- 2021年の研究
SNS上で「いいね」やフォロワー数に依存する傾向が強い人ほど、精神的な疲労感や自己価値の低下を感じやすいという調査結果が報告されています。
3. SNSのポジティブな側面
一方で、SNSがメンタルヘルスに対してポジティブな影響を与える場合もあります。
(1) 社会的支援の拡大
- SNSは、地理的な制約を超えて他者とつながることができるツールであり、うつ症状に悩む人が同じ境遇の人々とコミュニケーションを取る手段となります。
- 特定の支援グループや専門家のアカウントから、心理的なサポートを得ることも可能です。
(2) 情報の共有と学び
- うつ病やメンタルヘルスに関する知識を提供するアカウントや情報が充実しており、SNSを通じて病気への理解を深めることができます。
(3) 孤独感の軽減
- 物理的に孤立している人がオンラインでつながりを感じることで、孤独感を緩和する効果が期待されます。
4. SNS利用におけるリスク軽減のための対策
SNSによる悪影響を最小限に抑え、うつ病のリスクを軽減するための具体的な方法を以下に示します。
(1) 利用時間を制限する
- SNS利用時間を適切に管理することが重要です。例えば、1日の利用時間を1~2時間以内に制限することで、過剰な情報負荷を避けることができます。
(2) 自己比較の意識を減らす
- 他人の投稿をそのまま受け入れるのではなく、「SNSの投稿は一部の現実を切り取ったものである」という視点を持つことが大切です。
(3) 利用目的を明確にする
- 目的のないSNSの利用は、時間浪費やネガティブな感情を生む原因になります。利用する際には、何を目的としているのかを意識しましょう。
(4) ネガティブな影響源を避ける
- ネガティブな投稿や批判的なコメントを繰り返すアカウントをミュートまたはブロックすることで、心理的な負担を軽減できます。
(5) 専門家の支援を受ける
- うつ症状が強く、日常生活に支障をきたす場合は、心理カウンセラーや精神科医に相談することが推奨されます。
結論
SNSとうつ病の関連性は、多くの要因が絡み合う複雑な問題です。しかし、適切な利用方法や意識改革を通じて、その悪影響を軽減することが可能です。SNSを健康的に活用することで、ポジティブな側面を引き出しつつ、メンタルヘルスを守ることができます。