ゾルピデムについて
ダイヤモンド・オンライン2025.2.21の記事(https://diamond.jp/articles/-/359711)で大きな反響があったゾルピデムについて、解説いたします。
ゾルピデムとは?
ゾルピデム(Zolpidem)は、不眠症の治療に使用される睡眠導入剤で、非ベンゾジアゼピン系のGABA受容体作動薬に分類されます。
短時間作用型の睡眠薬として知られ、主に**寝つきの悪い不眠症(入眠障害)**に対して処方されます。日本国内では、「マイスリー(Myslee)」という商品名で広く流通しています。
作用機序(メカニズム)
ゾルピデムは、脳内の主要な抑制性神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)の働きを強化することで、リラックス効果をもたらし、入眠を促進します。
具体的には、GABA_A受容体のうち、ω1(オメガ1)サブタイプに選択的に結合することで、神経活動を抑制し、催眠作用を引き起こします。
この選択的な作用により、従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬(例:ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム))と比べて筋弛緩作用や依存性が少ないと考えられています。
ただし、完全に依存性がないわけではなく、長期間の使用には注意が必要です。
効果と特性
ゾルピデムは、服用後約30分以内に作用を発揮し、2時間程度で血中濃度が半減する(半減期:約2時間)という特徴を持っています。そのため、
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入眠困難な不眠症(寝つきの悪さ)に特に有効
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作用時間が短いため、翌朝の眠気や持ち越し効果が少ない
といったメリットがあります。
ただし、中途覚醒(夜中に目が覚めるタイプの不眠)や早朝覚醒には効果が弱いため、そのような症状には持続時間の長い別の睡眠薬(ゾピクロンやエスゾピクロンなど)が選択されることがあります。
用法・用量
通常、成人では5mgまたは10mgを就寝直前に服用します。特に高齢者や肝機能が低下している患者では、副作用のリスクを考慮して、5mgから開始することが推奨されます。
この薬は即効性があるため、服用後はすぐに横になって眠る準備をすることが重要です。
副作用と注意点
ゾルピデムは比較的安全な睡眠薬とされていますが、以下のような副作用が報告されています。
主な副作用
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ふらつき・めまい:翌朝に残ることがあり、転倒リスクがある。
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健忘(記憶障害):服用後の出来事を覚えていないことがある。
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悪夢や異常行動(夢遊病・もうろう状態):
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例:服用後に無意識のうちに食事をしたり、運転をするケースが報告されている。
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こうした異常行動を避けるためにも、服用後はすぐに就寝することが重要。
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依存性・耐性:長期間の使用により、効果が弱くなる(耐性)や、薬がないと眠れなくなる(依存)が生じる可能性がある。
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認知症リスクの可能性:
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ゾルピデムは脳の老廃物排出システムに影響を与え、アミロイドβの蓄積を促す可能性が指摘されている。これはアルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性があるとされている。
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併用禁忌・注意すべきこと
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アルコールとの併用は禁止:
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アルコールと併用すると、ゾルピデムの作用が増強され、呼吸抑制や異常行動のリスクが高まる。
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長期使用を避ける:
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原則として、不眠症の治療においては最短期間での使用が推奨される。
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長期間使用する場合は、医師の指導のもと、徐々に減薬することが望ましい。
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車の運転や危険な作業は控える:
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翌朝に薬の影響が残ることがあり、集中力や判断力の低下が起こる可能性がある。
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特に、高用量を服用した場合や高齢者ではリスクが高まるため注意が必要。
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ゾルピデムの安全な使い方
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服用は就寝直前に:
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服用後に起きて活動すると、記憶障害や異常行動が起こる可能性があるため、飲んだらすぐに横になる。
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アルコールと一緒に飲まない:
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作用が強くなりすぎて、意識障害やもうろう状態を引き起こすリスクがある。
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長期連用を避ける:
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耐性や依存を防ぐため、できるだけ短期間の使用に留める。
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突然の中止は避ける:
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長期間服用していた場合、急にやめると離脱症状(不眠の悪化や不安の増加)が出る可能性があるため、徐々に減薬する。
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まとめ
ゾルピデムは、入眠困難な不眠症に効果的な短時間作用型の睡眠薬であり、従来のベンゾジアゼピン系薬よりも筋弛緩作用や依存性が少ないとされています。
しかし、副作用として健忘や異常行動が報告されているため、服用後はすぐに寝ることが重要です。
また、長期間の使用は避け、必要最小限の量を短期間使用することが推奨されます。
不眠症の治療には、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善(就寝・起床時間の固定、カフェイン摂取の制限、適度な運動など)も併せて行うことが望ましいとされています。
ゾルピデムを安全に使用するためには、医師の指示を守り、適切な使い方を心がけることが大切です。
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