大人の発達障害について
大人の発達障害とは?
発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りによって、認知、行動、対人関係、生活スキルにおいて特性が現れる障害です。
幼少期に診断されることが多いものの、大人になって初めて気づくケースも増えています。
現代社会では、個人の生き方や働き方が多様化したことで、大人の発達障害が社会問題として認知されつつあります。
子供の頃は「個性」や「性格の問題」とされていたものが、大人になって社会生活を送る中で、職場や家庭、人間関係での困難として現れ、結果として発達障害と診断されることがあります。
また、大人の発達障害の特性を理解せずに無理を続けることで、うつ病、不安障害、適応障害などの二次障害を引き起こすことも少なくありません。
大人の発達障害の主な種類と特徴
大人の発達障害は主に以下の3つに分類されます。それぞれの特性を理解し、生活や仕事での支援や工夫を考えることが重要です。
1. 自閉スペクトラム症(ASD)
概要
自閉スペクトラム症(ASD)は、以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」と区別されていましたが、現在はスペクトラム(連続体)として捉えられ、一つの枠組みで診断されます。ASDの特性はコミュニケーションの困難さやこだわりの強さにあります。
特徴
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コミュニケーションの苦手さ
- 相手の気持ちや状況を察することが難しい
- 空気を読むことができず、場違いな発言や行動をしてしまう
- 抽象的な表現や冗談が理解しづらい
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対人関係の難しさ
- 友人関係や職場の人間関係が築きづらい
- グループ活動やチームワークに適応できない
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こだわりや特定の興味
- 一つの物事に強い興味や執着を示す
- ルーティンや習慣が崩れると不安やパニックになる
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感覚過敏・鈍感
- 光や音、匂い、触感に過敏でストレスを感じる
- 逆に痛みや寒さなどに鈍感な場合もある
大人の生活への影響
- 職場で「協調性がない」と誤解されやすい
- マルチタスクが苦手で、指示を柔軟に理解するのが難しい
- 特定の分野では優れた能力を発揮するが、他の作業には適応しづらい
- 感覚過敏が原因で職場環境や人混みがストレスになる
支援と対処法
- 職場では明確な指示や役割分担を徹底する
- 自分の強みを活かせる仕事や環境を選ぶ
- 感覚過敏を軽減するため、イヤホンやサングラスを活用する
2. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
概要
ADHDは、「注意欠陥」「多動性・衝動性」の2つの要素が主な特性となります。大人になると「多動性」は目立たなくなることが多いですが、「不注意」や「衝動性」は社会生活や仕事で困難をもたらすことがあります。
特徴
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不注意
- 物事を忘れやすい、物をなくしやすい
- 集中力が続かず、タスクが中途半端になる
- 優先順位がつけられず、締め切りに間に合わない
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多動性
- 落ち着きがなく、じっと座っていられない
- 頭の中が常に忙しく、他のことに意識が移りやすい
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衝動性
- 衝動的に発言・行動してしまい、トラブルになる
- 計画性がなく、目の前の欲求を優先してしまう
大人の生活への影響
- 職場でミスが多く、「だらしない」と誤解される
- 計画的に仕事や家事を進めることが難しい
- 衝動的な行動で人間関係やお金の管理に問題が生じる
支援と対処法
- タスク管理ツールやメモを活用して物事を整理する
- 環境を整える(静かな場所で仕事をするなど)
- 専門医による薬物療法や行動療法も効果的
3. 学習障害(LD)
概要
学習障害(LD)は、知的能力には遅れがないものの、「読む」「書く」「計算する」などの特定の分野に困難を抱える障害です。
特徴
- 読字障害(ディスレクシア):文字を正確に読むことが難しい
- 書字障害:文字を書く、文章を構成するのが苦手
- 算数障害:計算や数式を理解するのが困難
大人の生活への影響
- 仕事で書類作成や数字の処理に苦労する
- 指示を正確に理解するのが難しく、ミスが増える
- 能力や知識があるのに、発揮しきれない悔しさを感じる
大人の発達障害が診断される背景
大人になって発達障害が見つかる背景には、以下の要因があります:
- 子供の頃に気づかれなかった
学校では「個性」や「性格」とされ、見過ごされたケース。 - 社会生活で困難が顕在化
大人になると仕事や家庭の責任が増し、特性が目立ちやすくなる。 - ストレスやうつ病の診断過程で発覚
生きづらさから二次障害に悩み、発達障害の検査を受けるケース。
二次障害について
発達障害に気づかず適切なサポートが得られないと、以下の二次障害が現れることがあります:
- うつ病、不安障害
- 適応障害
- 自尊心の低下
- 対人恐怖症や引きこもり
まとめ:支援の重要性
大人の発達障害は、早期に特性を理解し、自分に合った環境や支援を見つけることが重要です。本人だけでなく、家族や職場の理解とサポートが、日々の困難を軽減し、社会生活の質を向上させる鍵となります。
支援機関や専門医療機関の活用、認知行動療法、生活スキルの訓練など、自分に合った対処法を見つけることで、強みを活かしながら前向きな生活を送ることが可能です。